• 企業の内部留保はどこから来たのか

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    いささか旧聞に属するが、経済101 の「内部留保再び」について素朴な疑問があるので。

    財務省の統計によると、国内企業の内部留保が400兆円を越えたそうだ。資本金10億円以上の大企業に限っても200兆円あるという。例によってそれを取り崩して雇用に回せ云々という議員がいたようだが、それは置いておく。

    財務省・財務総合研究所の「法人企業統計調査」における内部留保とは、資本金+資本剰余金+利益剰余金+自己株式+αのことである。資本剰余金とは資本取引(増資など)で得たお金のうち、資本金に組み入れなかったお金のことである。この資本剰余金は、平成11年度では約48兆円だったものが、平成20年度には100兆円を越えており、内部留保の増大に一役買っている。また、利益剰余金とは、純利益から配当金や役員賞与金などの社外流出分を差し引いた金額であり、貸借対照表では貸方の「資本の部」(日本では「純資産の部」)に勘定科目として表示される。平成11年度は約157兆円だった利益剰余金が平成20年度には約280兆円になっており、これが内部留保の数字を大きく上昇させている。従って、元記事

    詳しくは会計の専門家に任せるとして、ポイントは内部留保が資本=BS(貸借対照表)の右側だということだ。BSの右側は基本的にお金ないし資産がどこから入ってきたかをメモっておく場所であって、企業がお金持ち(=資産が多い)であることを示すわけでもお金儲け(=利益が多い)をしていることを示すわけでもない。

    は厳密には誤りである。純資産が対照表の右側にあるのは、資産ー負債=純資産という関係上そうなっているに過ぎない。つまり、企業には儲けたお金や調達しておきながら余ったお金が累積して今では国内企業全体で400兆円近くもあるということなのである。もちろん、これを持ってして企業がお金持ちだとか利益率が高いといった類の議論はできない。元記事にもあるように貯金がたくさんあるからと言って、収入が多いとは限らないのである。また、現金でそのまま持っているわけでもない。何かに投資したり、有価証券を購入したりしているところがほとんどだろう。お金をただ寝かせておくだけというのは企業の行動として愚の骨頂だからだ。

    しかし、である。リーマンショックで業績を下方修正しなくてはならないとなった時、慌てて派遣切りを行い、内定を取り消して学生を路頭に迷わせ、希望退職を募り、ワーキングプアが社会問題化するほど賃金を切り下げる…ことが必要だったほど財務が悪化していたとはとても思えない数字である。もちろん、資金繰りができなくてやむを得ずといった企業も少なからずあったであろう。それでもそういう企業はほとんどが零細企業であり、日本全体がそうであるわけではない。であるにも関わらず企業は人を積極的に雇おうとせず、しかも少ない人数で仕事をこなすために恒常的に長時間労働が行われているという実態がある。これを裏付ける資料も財務省が出している。法人企業統計調査では、平成11年度から平成20年度にかけて人件費はほとんど変わっていないが、内閣府の出している国民経済計算では名目雇用者報酬はむしろ減っている。これでは利益に応じた投資を雇用に対して行っていないと言われても仕方がないであろう。

    なぜ雇用しないのか。利益がありながらなぜ労働者に分配しないのか。この問いに対して元記事では回答していない。私は小泉内閣の経済改革を決して評価しないわけではないのだが、この結果を見ると雇用政策においては明らかに失敗であったと言わざるをえない。雇用の流動性も確保できず、正社員や公務員は御身安泰で勝ち組、負け組などとうつつを抜かして問題を先送りどころか悪化しているのを黙認するような現状をどう思っているのだろうか。おいしいところだけを持って行こうとする企業に、法人税も減税されたんだから、少しは日本の雇用に貢献しろよと言うことはそんなに無理な話なのだろうか。私にはとてもそう思えない。

    参考1: 財務省・財務総合研究所「財政金融統計月報第689号」
    参考2: 内閣府「平成21年度年次経済財政報告・国民経済計算」

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