• 日本の古代史を考える—②後漢書東夷伝

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    後漢書』が『三国志』より後の時代に書かれたことはよく知られていることである。従って『倭』の情報も『三国志』の方が的確、豊富であるとするのが常識になっている。事実、『後漢書』東夷列伝の倭人条は、ほとんどが『魏志倭人伝』の引き写し(しかも誤って写し取ったと見られる個所まである)の上に、字数も遙かに少ない(尤もこれは、『魏志倭人伝』の分量が名だたる正史の中でも際だって多いのためであるが)。しかし、にも関わらず、日本史にとって重要な一文があるため、無視はできないのである。

    俗皆徒跣、以蹲踞爲恭敬。

    皆裸足で歩くことを習俗としている。蹲踞で恭敬を表す。

    魏志倭人伝』以外からの資料を参照したとおぼしき個所である。蹲踞は今でも地面に座るとき普通にする姿勢である。ただし、足は閉じていただろう。もしくは、時代劇でお侍が庭や廊下に控えるときの、片膝突いてもう片方の膝は立てるあの座り方である。これは『後漢書』を書いた「范曄(西暦398年-445年)」が生きた時代、つまり五世紀はじめの習俗ではないかと思われる。(この項、2013年6月4日に追記)

    建武中元二年、倭奴國奉貢朝賀、使人自稱大夫、倭國之極南界也。光武賜以印綬。安帝永初元年、倭國王帥升等獻生口百六十人、願請見。

    建武中元二年(西暦57年)、倭奴国が貢ぎ物を奉り、朝賀に来た。遣使は大夫を自称した。(倭奴国は)倭国の最南端にある。光武帝は印を授けさせた。安帝永初元年(西暦107年)、倭国の王たち帥升その他がやって来て、生口(奴隷)160人を献上の上、お目見えすることを願った。

    この記事にある、光武帝が授けた印こそ、『漢委奴国王』の金印である。というかこの記事があるからこそ、あの金印は本物であるとされているわけだ。この字面は、「かんのわのなのこくおう」と読むと高校などでは教えられるが、漢は金印を陪臣に与えなかった(与える場合は銀印か、銅印)ので、それはありえない読み方である。また、後世の正史も倭国のことをまた『倭奴國』とも書いている通り、これは『倭奴』の国の王に与えられたと解するべきである。学者さんはなぜ嘘を平気で教えるんでしょうね。では何と読むかというと、当時の漢音から「かんのゐなのこくおう」と読むのが正しい。「いとのこくおう」説のあなた、残念様。私も残念の一人。(笑)

    加えて、金印志賀島から出土したということは、考古学的にも常識的にもその付近に件の金印を頂いた国王が昔存在していたということであり、それ以外に解釈しようがない。けれどもなぜか、輸送中に落として行方不明になってたんだとか、受け取ると冊封されてしまうことになるから、遣使が志賀島に埋めて、もらってないことにしたんだとか訳のわからないことを言って、金印が近畿天皇王朝に下賜されたものだと頑強に言い張る。正直、頭が沸いているとしか言いようがない。ある遺跡から出土した甕棺入りの人骨が、実は棺おけごと移送中にたまたま置き忘れられたものなのだ、などと主張することを考えてみればわかる。まず間違いなく、可哀想な人を見る目で見られることになるだろう。なのにどうしてこの金印だけ例外にしたがるのか? いつまで皇国史観に取り付かれてるんだと、お前らにつぎ込んできた税金を返せと言いたくなる。

    なお、志賀島にある志賀海神社は、『綿津見三神を祀り、全国の綿津見神社の総本宮であり、4月と11月の例祭において「君が代」の神楽が奉納される全国的にも珍しい神社である』(ウィキペディアより引用)。なぜ北九州の先端とも言える場所で「君が代」が? と思ったあなたはえらい。

    さて、気を取り直してその続き、西暦107年になって、倭の王たち(複数)が朝見に来たことが記されている。取りあえず定説に従って倭の国々の王たち(そのうちの一人が帥升)という解釈で訳してみたが、『帥升等』が人名で、倭国王は一人だとする説もある。ここで注意すべきは、「謁見を願った」としか書かれておらず、暗に謁見を断られたことを示している点である。後漢が認める倭の王は一人って先例があるんだから、集団でやって来た連中をうっかり引見しようものなら、ご先祖様(光武帝)を馬鹿にすることになる。体よくお引き取り願ったんでしょうな。あるいは、この時、倭が内乱ではないにせよ、群雄割拠で推戴すべき大倭王が不在であったと読み取ることもできる。だからどこかの国だけが朝見することはできず、集団で赴くことになったのだと。時期的にも、卑弥呼の前に 70 年〜 80 年の間即位していた男の大倭王(ただし期間の長さから、ひとりではなく複数の王が相次いで即位したと考えられる)が登場する、その少し前になるので、別段うがった見方でもないと思う。

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